今週の提言

【第4話】販売ノウハウは“技”である。だから、伝承こそが成長の源泉

『インスタント職人増殖』(日経MJ)という見出しが目に飛び込んできました。

紙面には、飲食業界で一人前になるには、長い時間をかけて修行していた従来のパターンが変化し、今では、短期間で育てる学校がいくつもあり、その事例が紹介されていました。

つまり、その道のプロになるめのテクニックやノウハウを実践を通して「学ぶ」のであり、プロの技を盗み取る「修行」とは一線を画するアプローチである。

そして、そこの卒業生から繁盛店が生まれていると紙面にある。飲食業界で職人を目指す人にとっては、夢の実現の最短ロードとなるわけだから、入学したい気持ちになるのは当然ですよね。

翻って、学校側に視点を移しましょう。

このビジネスモデルの“表”は夢のサポートであり、“裏”は繁盛店づくりによる自校のプロモーション。実際に幾つもの繁盛店が生まれてこそ、この学校の「品質保証」となるわけです。「品質保証」がなければ、巷にある料理専門学校と同じになってしまいます。

繁盛店を多く生み出すパワーが他校との差別化となり、このモデルを支えているのは言うまでもない。

さて、表と裏を整えただけでは、ダメですよね。中身がちゃんとしていないと。従来、職人の技を得る為には、師匠や先輩の技を見て「盗む」というのが常識ですが、「学ばせる」というスタンスをとる以上、提供ノウハウにバラツキが生じない様(平準化)にした“珠玉のマニュアル”が必要になってきますよね。(実際、マニュアルの存在は定かでは有りませんが)

つまり、短時間で提供するサービス品質(ノウハウ)の安定化を図るには、マニュアル的なものが必要です。活字化したマニュアルが無い場合、製造業の現場では口伝えで先任者から後任者へ引き継がれているケースがありますが、販売の現場にマニュアルがあるお店は極めて稀なんです。

理由は、製造業と違って会話を通してモノを販売するという性質上、「声を出す時は、ああして、こうして」と教えなくても、会話をすることは誰でもできます。だから、改めて教えなくても、即、店頭で販売という業務に就くことができると考えている経営者がいるからなんですね。

だから、「選ばれる販売員・お店になるための売り方」を知らない(教えられていない)販売員が多くいます。この現状が、自店にとってプラスなのかマイナスなのかは明白です。

「選ばれる販売員・お店になる」ためには、お客様の満足度が高まるような応対が必要になります。満足度を高めるには、感情で動く人間の特性を理解した上で、臨機応変に応対しなければなりません。

例えば、ヒトは何の為にモノ・サービスを買うのか?を考えてみましょう。あなたは今、欲しいものはありますか?あるとしたら。なぜその商品が欲しいのかを考えて下さい。

今使っている商品に対して、「使いにくいから」「重いから」「古くなったから」「飽きたから」「流行遅れだから」などなど、様々な理由が挙がると思います。このことから分るとおり、ヒトは使用している商品に「何らかの不満」がある場合に。「買う」という消費行動に移るのです。

だから、まずは、「欲しい理由を探る」。

しかし、マニュアルを備えているお店では、「笑顔で元気よく挨拶しましょう」→「様子を見て一声掛けましょう」→「商品の特徴などを説明しましょう」→「クロージングに持ち込みましょう」などが記載されており、それに基づいてロープレ研修が行われていますが、これでは、十分ではないんですね。

理由は至極シンプル。
買う/買わない の決定権者である買い手の心理に寄り添いながら、プロとしての応対ノウハウが凝縮されていないから。
買い手の心理とは、例えば、ヒトは、商品に対する不満が解消されることが認識できて初めて、買う事に対する前向きな「気持ち」に移っていくものなのです。

また、プロのノウハウとは、例えば、お客様の行動を観察し、「買物予算」「ライフスタイル」などをイメージする。そして、どのタイミングで、どんな一声を掛けるのか?その時の反応によって、どのように応対すべきなのか?など、
従来、ブラックボックス化となっている部分を明示するのです。

そうすることによって、販売経験が浅くても、お客様に喜ばれる応対をする事が出来るとともに、技”の継承が可能になるのです。

これを読んで下さっている人の中には、「人間は十人十色だから、そんなものを作っても、使い物ならない」と思われる方がいらっしゃるかも。

でも、よく考えて下さいね。
ヒトの行動原理は、満足の追求です。
そこを外していないから、汎用性が高くて役に立つ代物になるのです。

【第3話】経営者が持ち合わせるべき資質とは?

「先生、◯◯億突破しました!」

少し前の話になります。支援先の経営者と夕食の待ち合わせをしており、顔を合わせた際の開口一番の経営者の言葉が上記のです。

そして、このように応えました。
「ワンランク ステージが上がりました。次のステージを目指しましょう」と。

唐突に始まりましたので少し解説を加えると、決算を終え、売上高が、初めて大台を記録したという報告なんですね。

このような言葉を聞く時、とても嬉しく思うと同時にこの仕事の充実感を味わいます。

そして、席に座ると直ぐに、
「先生、うちの会社、どうすれば次のステージに行けますか?」と尋ねられました。

仕事柄、いろいろなタイプの経営者の方にお会いする機会があるのですが、成長企業の経営者に共通することが、これなんです。

つまり、
「現状に満足しない」
ということです。

では、
「現状に満足しない」という気持ちだけで、成長を手に入れる事ができるのか?
そんなことはないですよね。

行動しないと。

では、あなたにお尋ねします。
あなたは、下のA、Bどちらのタイプですか?
A:目標を設定し、そこに至までのプロセスを事細かく検討し、そしてその準備
 を整えてからスタートする
B:目標を設定したら、まず実行。走りながら考えてゴールを目指す。

経営者の資質として、「B」のタイプが適任だと思います。

経営者の仕事は、“決める事”です。ビジネスの世界では、色々なことを即座に判断していかないとタイミングを逃したりします。たっぷり時間をかけて完璧なプランを考えても、経営環境は刻々と変化していますので、折角、熟考したのに、「使えない」ということが起こってしまいます。

まずは、行動する。
失敗したら、また考えて行動する。

とても大切なマインドです。

そして、成長企業の経営者は、良く笑い、よく転ける。
転けるのは当たり前なので、怖がらない。

【第2話】“目線”の高さが推進力を左右する

「中小企業の経営者は、“目線”をあげないと」
先日、ある事業家の方との会話の中で、その彼が発したコトバです。

 彼は、デザイナーとして華々しい受賞歴をもっています。世界で最も権威あるデザイン賞などの世界三大デザイン賞の内、2つを受賞し、国内のグッドデザイン賞なども受賞。実業家としても地域の産業をデザインを通して、世に送り出すことをミッションとしています。

 彼の手により、ヒットした商品は様々。ヒット商品を誕生させるには、製品が高品質であればヒットする訳ではないですよね。市場調査から始まり販売チャネルまでのプロセスを設計する必要があります。

 彼曰く「商品企画・開発・デザイン、組立メーカー、部品メーカー、下請けメーカー、塗料メーカーなどを束ねることが一番難しい」とのこと。

そんな彼が、多くの中小企業の経営者と仕事をする中で感じたことが、下のようなことです。

「目線(ビジョン・目標)が低い。そして、その目線の成功&失敗に一喜一憂しすぎ。だから低いままなんだよね。」

 ふつうに考えれば当たり前のことですよね。
だって、目標を設定し、そこに向かって日々の活動を行うわけですから。

 目線が低いと達成確率は高くなりますが、手にするものはそれなりの結果です。反対に、目線が高いと達成確率は低くなりますが、その低さを克服するために知恵を絞って目標達成に全力を尽くします。

 この点(知恵を絞る)が、とても大事です。
なぜなら、
「知恵を絞る=業務の改善、改革」だからです。

目線が低いと言う事は、自ら、企業を成長させる推進力を弱めていることにほかならないのです。

 推進力が弱まると、自ずと業績悪化を招きやすくなります。この状態が企業経営に及ぼす点は、業績悪化の程度です。推進力がない訳ではないのですから、業績は、じわりじわり下降します。

 そう、「じわり、じわり」。
「まっ、頑張れば、なんとかなるさ」程度。

 急激に悪化するのであれば、「ヤバイ」。なんとかしなければと思うのですが・・・でも、他力では何ともならないのが現実です。

じわり、じわり悪化。
“ゆでガエル”が現実になってしまうのです。

 多くの経営者の方は、成長に向けて何とかしなければ。と思っています。
でも、目先のコトだけに注力してしまい、崇高な理念だったりビジョンがいつしか頭の端っこに追いやられているのでしょう。

彼の発した一言、とても重いですね。

【第1話】経営者の経営姿勢の重要性

HPを作り直した後の初めての投稿となり、いささか緊張してこの文章を書き始めました。
「経営者としての姿勢」シリーズとして書いていきますので、お読みになる方、宜しくお願い致します。

 さてさて、今年もすでに2月も終わろうとしていますが、昨年末のちょっとした光景について、「経営者の経営姿勢の重要性」を感じましたので、今日はその事を書こうと思います。

 年末ともなれば、年賀状の駆け込み投函で郵便局が混雑しますよね。これをお読みになっている方の中にも、混雑ぶりを実感されている方もいらっしゃると思います。年末の風物詩といえば聞こえがいいのですが・・・。

 年賀状を投函するために車で地元の郵便局に到着した時のことです。その郵便局は20台程の駐車スペースが確保されているのですが、毎年、この時ばかりは、駐車場に入ろうとする車と出て行く車とで、「流れ」がスムーズではなくなります。挙げ句の果てには、周辺の道路にまで渋滞を引き起こすという、迷惑な光景が繰り広げられていました。

 しかし、今年は、その光景が一変したのです。

 駐車場の周辺では、駐車場に入ろうとしている車に局員の方々が近づき、年賀状を回収しているのです。寒風吹きさらす中で、ですよ。

 郵便局って、こんな事(顧客サービス)したっけ?
「郵便局、変わったんだ(変わりつつある)」と、その時、感じました。

 この例とは反対に、経営者が一生懸命に何度も何度も自分自身の考えや想いを伝えても、従業員は一向にその意向に添う行動をとらずに困っているというケースを見聞きします。「笛吹けども踊らず」状態です。

 そんな時、経営者であるあなたは、行動につなげるにはどのようにしたらいいのだろうか?と途方にくれるはずです。今迄以上に言い続けるというのも、アリ(効果のほどはさておき、何もしないよりかは、マシだという程度の意味)ですが...。

 翻って、日本郵政株式会社は「笛を吹いたら、踊った」んですね。

 でも、「踊る」までには、長い時間を要したのだと思います。郵政民営化により、日本郵便株式会社になってしばらくの間は、「笛吹けども踊らず」状態だったと推測します。長い時間の中で、「親方日の丸」という組織文化が醸成され、根付いてしまっているので、そう簡単にはそれから脱出できないからです。

 そこから脱出しようとして「おもてなし経営」(この表現が使われたのか否かはわかりません)という旗印の仕組みを導入しました。その効果が、やっと芽吹いてきて、冒頭の行動に繋がったと察します。

 会社に変革を起こすには、仕組みを作る事が効果的だという一例です。

 企業には、様々な価値観を持った人が集まってきます。当然、働き方に対する考え方も様々です。「生活のために働く」という人もいるでしょうし、「働くことに喜びを感じる」人も当然います。「楽(ラク)してお金を稼ぎたい」という人もいるでしょう。

 様々な考え方を持った従業員を、「儲かる」ために働いてもらうようにするのが経営者の仕事の1つです。現場を変えていくには、「仕組み」を作るのがイチバンなんですね。

会社に変革をもたらしたい。お客様に「選ばれる」お店にしたい。など、企業経営の成長のスピードは、トップの考え次第です。そして、その責任はとても重いです。

「意志ある所に道は開ける」「思い立ったら吉日」などの格言めいたものがあります。「思っているだけ」では、会社は変わらないです。腹をくくって決断し、その責任を背負い込むのが経営者の姿勢です。
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